読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

hatena@raf00

@raf00のはてな出張所

京大生が考える会社員とフリーランスの個人的回答

elegantly cruel. @ d.hatena
elegantly cruel. @ d.hatena

id:elegantlycruelブコメに反応してもらったので、ちょっとフリーランスについて書いておこうと思う。

「経験ないからわからないよ!教えてよ!」たった100文字で「わかれよ、若造」と言うのも失礼な話だしね。長くなるかもしれないし、「俺の聞きたいことはそんなことじゃないよ!」と思うかもしれないけど、そこは勘弁な。経験談の一つとしてそんな見方もある、と思ってくれれば嬉しい。

一応経歴紹介

話の前に自分の経歴をざっと紹介させてほしい。ここは飛ばしてもらって構わないが、話をするにあたって関係ない部分でもないので一応。

経歴の始点は偏差値の高くない普通の高校生の頃だ。ゲームや同人などの趣味が高じて業界にちょっと関わらせてもらったり、軽く文章を書く仕事をいただいたりしたのが始まりになる。それは良かったのだけど、趣味とそこから発生した仕事に現を抜かしている間に大学受験に失敗、1年浪人をしたのだけどまた失敗したわけ。元々現国以外の成績も高くなかったし、入れても三流大以下だったのは間違いない。

受験に失敗したので今後の人生を考えると「まぁ文章で食っていけるかもな」と思い、ライターや編集者向けの専門学校に入学。普通のバイトをしたりセックスしたり麻雀したり週に2度は仲間と飲み会をして実りのない文学論議をしたりと、大したことをせずに2年を過ごしつつ、就職活動をしようと思ったら先輩のライターから手伝ってくれないかというお話。その日から専門的な知識もテクニックもコネもなけりゃ就業経験もないフリーライターの誕生ですよ。と思ったら、いきなり先輩ライターがライター廃業するという裏切りにあってフリーライターという名の無職が誕生ですよ。

無職なのはとりあえずまずいということで先輩ライターに紹介してもらったことのある出版社や編プロに声をかけたらいくつか仕事をもらえたんでフリーライターを継続。その中でも「全く知らないジャンルの記事でも、その方面に詳しい人が読んでもそれなりに納得できる記事をでっちあげられる」能力があったようで、ライターがバックレて〆切りに間に合わない記事を任されたりしていたら、編集同士で「こいつ使えるぞ」と紹介してもらったりしてクライアントの範囲が拡大していったんだ。

いつの間にか普通に食っていけるようになり、主に「ゲーム」「携帯」「インターネット」「アダルト」ジャンルの雑誌がメインに。記名記事を書けるような立場じゃなかったけど、フリーの癖に出版社と編プロにそれぞれデスクをもらったりと過分な扱いをされたりもした。あと自作PCのパーツメーカーと縁ができて広告のコピー制作とかパッケージのライティングとかもしていたな。
収入は月によってまちまちだ。月5万ということもあれば、80万稼いだ月もある。無記名ライターとしては順調な方で、当時運営していた携帯サイトからの収入も毎月5万ほどあった(昔は良かった)。

で、4年ほど順調にライターをしていたんだけど、体力的に一生やれる仕事じゃないと思ったのと、インターネットの世界を紹介するのは面白いが、紹介するだけではなく面白いものを作っていきたいと思ったんで古参のWebサービス会社に入り、超有名なWebサービスの企画管理運営編集をやらせてもらったりした。
今はその会社を辞め、大企業向けのWebサイトを制作する会社でWebディレクターをしている。

いきなり長くなった。

エスパー伊藤かよ!に対して

えーと元エントリでは「わしが抱いている株式会社への不満」なるものの具体的な中身をほとんどなにも描写してへんかってんけど、テレパシーのごとくわしの心が読めはったんやろうか。

簡単な話だよ。
「フリーになりたい」なんて話はフリーやってると、とにかくたくさん耳に入ってくる。そりゃもううんざりするくらいにね。ましてライター育成の専門学校卒なんで後輩たちからやたらと相談されたりもする。君の元エントリはいくつかあるパターンに対してあまりにも典型的すぎ、続きのエントリで書いている認識も想定できる範囲だった。
でもね、認識を一つ一つ挙げて「会社勤めもフリーも変わんないね」という結論にたどりつけるのは大事だし、聞いてみたいと思うところは魅力的だと思うよ。態度は悪いけどね。

フリーの認識の誤りを指摘するよ

まず君の「会社」に対するイメージはネガティブな側面として、「なくはない」話ではある。でもフリーランスに対する認識が、自身でも意識しているように貧弱なようだ。
そのあたりからちょっと話していこうか。

フリーランスで働くと言うことは分業ではないということ

これは全く逆。
実際に行っていく業務自体は会社よりも遙かに「分業」であることを理解しておきたい。「分業の結果、専門化され効率化され」たパーツとしての仕事が求められるんだ。ライターなら編集者が責任を持つ「企画・構成・取材・ページデザイン・記事作成・校正・入稿・予算管理・工程管理」といった作業のうち、記事作成だけをまかされたりね(多くは取材も含む)。業務そのものに対する権限は会社員の方が遙かに多く、フリーって下流工程だよ?
この分業をフリーランスとして行う上で「営業・生産管理・経理・総務・経営」が発生してくる。あと余談だけどフリーでやっていても人事的作業も発生したりするよ。

人事はないけれど、営業・生産管理・経理・総務・経営その他全部ひとりで請け負う。

大事なことだけど、営業と生産管理を除くとこれらのスキルがどれだけ上がっても、肝心の業務内容とはあくまで別、クライアントの評価は上がらないよ。あと人事的業務も場合によっては発生するよ。

休みは完全自由だよ。いつ休みをとってもいいし、休まずにはたらいてもいい

休みは請負う仕事に応じて発生するから逆に自由がない。
休みたいと思っても順調に仕事が入っていて休めなかったり、安定した収入のために仕事が欲しいのに暇で仕方なかったりというのがデフォルト。

フリーになるとどれだけ忙しくても土日は休んでいる会社員が恨めしくて仕方なくなるよ。しかも会社員なら営業時間内での対応をしていればいいけど、フリーだと24時間がフルに営業時間と見なされて随時対応を求められたりすることもザラにあるから、9時5時どころか9時9時の意識になってしまったりもして、またまた会社員が恨めしくなったりもするよ。で、たちが悪いのはクライアント側が「24時間対応可能」というメリットを求めてフリーライターに仕事を依頼することが多いところ。

人間関係は気楽にみえてそうでもない。お仕事もらいにいく取引先は、やっぱり人間関係で縛られてる。

これはその通り。僕も仲が悪い部署からどちらも仕事をもらうような環境にいたことがあって、「あっちの仕事ばかりしやがって」などと、自分とは関係ないはずの派閥争いに巻き込まれたりしたことがある。外の人間だからその関係を変えることもできないしね。担当者が人間的に破綻していることもよくある。
仕事関連で仲良くなりすぎるのもまずい場合がある。いろいろ融通がきくという大きなメリットがあるけど、無茶な依頼を振られる可能性も飛躍的に高まるから。

会社勤め以上に人脈がモノいうよ。会社員以上に人脈が広がるチャンスがあるということでもある。

営業と言っても売り込みができるわけじゃないから、人脈は死ぬほど重要だよ。会社員よりも幅広い人に会う機会はあるけど、会社という後ろ盾がないので人脈にできるかどうかは本人の力量にかかってるよ。

仕事を受けたり断ったりするのは完全に自由なので、すきなことだけやろうと思えばできる

いくらでも捨てられるクライアントを持っていて、驚異的な実績に支えられているなら好きな仕事だけをやることは可能。ただ前職で相当実績を作っているか、フリーランスとして異常に仕事をこなしてきていないと無理で、そのレベルになると今度は仕事が多すぎて振り分けが難しくなる。
その手前にいるなら、これは話にならない。依頼される仕事自体は少ないので好き嫌い関係なく仕事を請けなきゃならない。
ましてや実績が少ない・クライアントとの付き合いが少ない時期は1度断ったら2度と依頼が来ないので、来た依頼は死んでも離さなくなる。

決してクビになることがない(自営業だから)。干されることはあるかもしれない。

食っていくためには継続して仕事を振ってくれるクライアントと付き合う必要がある。なので、そのクライアントとの付き合いがなくなるということは1部分で「クビになる」こととほぼ等しい。お店を開いている自営業だったら1人の客に嫌われてもそれほど影響がないけど、1クライアントを失うダメージは大きい。

自分が食っていけるだけ稼いでこれたらいいよ。

毎月食っていけるだけの仕事を得るためには、それまで会社員よりも遙かに頑張って仕事をしないといけないよ。
ライターなら単価が低いので人並に食うためには相当仕事をしていかないといけないよ。

社会保障は奴隷並みの扱い。体壊しても労災おりないよ。当然ながら労働基準法は適用外だよ。

奴隷並みの扱い…というか国民健康保険しかないので無職と同じだよ。

会社の特徴はもろにフリー部分に影響するよ

君の「会社」に対するイメージはネガティブな側面は、会社の中だけでは完結しない。彼らがクライアントになることで、フリーランスの君にも大きく影響するんだ。むしろ大概の場合は会社の中にいるよりももっとひどい。フリーは彼らの下請けだから。

会社勤めの利点はただひとつ、分業ということ。これに尽きる。

分業された1部署から依頼が来るので、君が行う仕事はさらに下流になる。逆に上流工程に食い込めるのはフリーの中でも特に実績がないと難しい。企画持ち込みなんて遠い話だ。

官僚制あるいは軍隊のような、トップダウンのピラミッド型命令系統だよ。

フリーランスはピラミッド型命令系統の最下層だよ。そしてどれだけ実績を重ねても外の人間だからピラミッドの上にはいけないよ。

やりたくないこともやらなきゃいけないよ。業務命令だから。

そういうやる気のない会社員からも仕事を請けなきゃならないよ。

いちいち上司にお伺いたてなきゃならんのが筋だよ。なにかが決まるまでやたら時間がかかる。

会社の中にいれば直接上司に伺えるけど、依頼を受けた身ではさらに遠くなるよ。しかも社内なら伝わってくる様々な裏事情もフリーランスには届かないので理不尽な変更などが突然決定事項として降ってくるよ。

上司の個人的な好みで物事が動くことが多いよ。上司とウマが合うかどうかは運命だよ。

クライアントの個人的な好みで何度でも修正させられるよ。ライターだとどれだけ読者が興味を持つ情報があっても、担当編集が興味を持たないと記事が通らないよ。

自分の理想とかやりたいことが明確にあって、日常の業務とズレてると会社生活が苦痛。

会社なら部署変更や社内の改善で変えようがあるけど、フリーだと「できることをやる」しかないので理想を追ってる余裕はないよ。売れてきてもこの傾向は変わらないよ。
変な売れ方をすると「ファンの理想から離れられないアイドル」状態にもなるよ。

頭からっぽにしてワンワン犬のようにご主人に従ってても平気なら、これほどラクな場所はない。

フリーランスは頭を駆使してワンワンご主人に従う必要があるよ。ある程度実績を重ねてようやく下請け企業だよ。

すべてが組織の事情だけで動いてるよ。従業員個人の人生は、組織の前にはただの換金可能な労働力であって、不要になったら廃棄するよ。

フリーは案件単位で換金可能な労働力でしかないよ。会社員を廃棄するのは大変だけど、フリーは案件単位の契約なので廃棄する必要すらないよ。だから自然無理をさせるし、徹底的に遣いつぶすよ。

営業は自分の給料をペイする以上に稼いでこなきゃいけないよ。人事や経理とかのバックヤードのスタッフ連中を養っているのは営業やライン部門。

フリーランスでやっていて、バックヤードにかかるコストのことを考えると泣きたくなるよ。

さらに体験談からいろいろ書くよ。

まず、いきなりフリーは無理だぜ。

自分が卒業後即フリーなんてことをしちゃってるから説得力がないように聞こえるかもしれないけど、いきなりフリーなんてなれないよ。

まず仕事がない。実績がない奴に仕事を依頼する人はいないよね。
そもそもプロとしてふさわしい成果物が出せるのか?納期他の決まり事を守れるのか?スムーズなやりとりができる人なのか?その業界の基本的なルールをわかっているのか?
このあたりがわからないとそもそも仕事を振ることすらできない。
フリーになるためにはそういう自分を判断してもらうための実績が必要になる。
だからほとんどの場合、会社勤めをしてからフリーになる人が多いんだ。既に信用を得ている既存の取引先から仕事を請けたり、あるいは元々の会社から仕事をもらったりね。

もちろん例外はある。Webで凄まじく人気のあるブロガーやテキストサイト運営者をライター起用したり、ジャンルの専門家に対して執筆を依頼したりという例は少なくない。この場合サイトや専門家の実績が評価の対象になる。ただ、この例だと積極的に「ライターになりたい」というよりは「依頼が多くなってきたので専業のライターになる」というように受け身な姿勢であって、積極的にライターになるための参考にはなりにくい。

僕の場合は幸いにも高校から専門学校に入るまでにいくつかの仕事をしてきたので、卒業後にいきなり実績ができていた。あとライターの専門学校ということで、若干のアテを作っておけたのが大きい。その後は編集者同士・ライター間での紹介でどんどんクライアントの幅が増えていった。

何をやりたいんだ?

フリーになりたいのはわかった。できることが「物を書くくらい」だということも書いてある。じゃあどんなライターになりたい?どんな記事なら書ける?

この部分は君の一番駄目なところだ。就職活動をすれば面接で「弊社を志望する理由」を聞かれるだろう?普通の企業に普通に面接するだけなら「御社の将来性に期待して」などと適当な答えでこの部分を回避できるかもしれない。

でもフリーランスというのは自分の技術そのものが商品だ。自分のスペックを明確に答えられないようじゃ話にならない。それを誰も教えてくれないし、新卒採用の時のように誰も適正を見つけようとはしてくれない。

さらにライターなら自分だけでなく、扱う対象の分析もできなきゃならない。同じような洗濯機を10個並べてそれぞれの特徴を見つけたり、何かの出来事に対して読者がどの部分に関心を示すのかを見いだすのが仕事だ。自分すら分析できず、専門化できなくてどうする?

あと、多刀遣いの能力を磨くことは重要だけど、それを表立って言わない方が良いというケースがフリーランスでは多々あるぞ。編集もできるライターなんてすごく重宝されるんだけど、単価が安くなって死ぬことになったり、依頼が増えたはいいが勉強しなきゃならないことが技術の分増えていろいろ追いつかなくなったりもするから。
(フリーライターになるにあたって先輩からまず言われたのが「イラレとクォークは憶えるな。ライティングのギャラでレイアウトまでやらされるから」だったな)

フリーライターで食うのは大変だぞ

「食っていけるだけ稼いでこれたらいい」とは言うが、食っていくのも大変だ。
このあたり、具体的な数字もちょっと入れていこうか。

コンビニに並ぶような雑誌やムックで具体的に数値を出すと、1ページあたりの単価は\8,000〜\12,000くらいで、1依頼あたり1〜4ページくらいだ。
だから月20万を稼ごうと思うと、依頼が平均2ページなら10依頼20ページをこなさなきゃならない。20ページの文章を書くだけなら楽だと思うかもしれないが、それぞれ取材や調査を行うとこれが相当時間がかかる。担当する記事のラフを切るのもライターの仕事だ。
で、このくらいの仕事を回していくためには継続して依頼をくれるクライアントを数社持たなきゃならない。こういうクライアントを獲得することも大変だけど、このクライアントとの関係を維持するためには依頼を断らないようにすることが大事になってくる。
「好きな仕事を請けるも断るも自由!」のは遠いあこがれだよ。

新卒って本当に最高だよ!

社会のルールって本当に細かくて膨大だ。
会議室に通されてどこに座ればいいか、名刺の渡し方なんてささいなことから始まって知っていなきゃならないことが山ほどあって、業務を遂行したり人脈を作っていくにはどれも欠かすことができないんだ。フリーランスはそういった諸々をできていなければならないし、誰も教えてくれない。上司が謝れば済むような新卒社員の失敗でも、フリーだったら本人が責任者だ。ささいな失敗で仕事を失うリスクがままある。

そういう様々な事を教えてもらえる上にその間の給料も保証される会社ってのは偉大だよ。

僕は業務部分に関しては高校から始めていた仕事や、趣味でかなりカバーできた。校正記号などはなぜか高校の時から理解していたしね。社会ルールに関してはかなり苦労した。依頼を受注している間に連絡なしで海外旅行にいったりして大捜索が行われたり(〆切には間に合わせていたけど、連絡が取れないだけで問題になるんだ)と問題を起こしたこともあった。
学生からいきなりフリーになるってのは相当大変だよ。

でかいことをやりたいなら大企業に入っとけ

僕のように専門卒の低学歴であるなら、フリーランスから成り上がるコースで上を狙うのもいい。でもid:elegantlycruelのような高学歴を持っているなら、絶対に大企業に入る方が後の展開が楽だと思うよ。
フリーよりも会社にいる方が、中小企業よりも大企業の方が遙かにでかいことができる。少なくともその可能性が高まる。

一度社会人になったら、以後の展開はその社会人経験を元に判断される。中小企業で小さな仕事しかしてこなければ京大卒でも扱いは他の三流大学生と変わらなくなってしまうから。
それにビッグになる可能性を少しでも感じるなら、苦労は後回しにしない方がいい。目先のメリットに縛られない方がいい。
企業にいても潰れるかもしれないという不安はもっともだけど、その企業に入れなくなってしまうんじゃ元も子もない。

最後に

id:elegantlycruelに伝えるべき事を伝えきれないまま長くなってしまった。
読むのも面倒だと思うけど、「ここがわからん」「ここを噛み砕け」「ここは違うんじゃないか」と聞きたいことがあればコメントしてほしい。