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hatena@raf00

@raf00のはてな出張所

有料サイトの苦境。近づく無料サイトの限界

5年ぶりくらいにライター仕事をしている間に、いろいろと面白い話題が挙がっていたのに動けないまま1ヶ月経ってしまった篠原ですよ。この2ヶ月ほど「フリーライター」について思い出したりする機会が多かったので諸々書いていきたいと思うのだけれど、本業の方で興味深いエントリを読んだので、ちょっと言及したいなと。


http://v.japan.cnet.com/blog/murakami/2008/10/01/entry_27016585/


実際、Webサービス企業で運営に携わると、無料有料を問わず同様の危機感は数字から感じられるんです。
村上さんがまとめられている傾向というのは、ユーザーが想像する以上にはっきりと数字に表れています。
特にアフィリエイトと有料サービスサイトでの傾向は顕著です。
以下、ちょっと「リテラシーにより無料・有料の利用率が変わる」という本論はさておき有料サイト・無料サイトの別側面を書いていきますよ。

有料サイト、ちょっとした補足数値

前職のWebサービス企業(みんなが知っている古参Webサービス屋)では、有料サービスサイトの運用も行っていたのですが、やはり言及されている特徴が出ています。また、その有料サービスサイトで顕著な特徴を挙げると
 ・インターネットの平均・無料版の利用者と比べて、極端に35歳以上のユーザー層が多い
 ・インターネットの平均・無料版の利用者と比べて、極端に管理職・経営者の属性比率が高い
という点が付け加えられます。


この2点の原因は
 ・有料サービスの決済方法がクレジットカードであり、カードを持たない若年層が集まらなかった
  (一応銀行振込もありましたが、利用率は低いです)
 ・サービス内容が情報収集の手間を大幅に削減するものであったため、多忙な経営者層に受け入れられた
といった推測が比較的容易にできます。


この部分は有料サービスの問題として重要なポイントです。

「タダで出来ること以上の価値」の崩壊

id:NOV1975
タダで出来ること以上の価値を提供するのが本道で、タダでできることにひょいひょい金出す人から取っていくするのはサービス提供じゃなく金儲け。もちろん悪くはない。

そう、タダで出来ること以上の価値を提供するのが本道です。
が、「無料で何でも出来る」文化の浸透というはこの前提を踏み荒らしてしまうことも問題なんです。
例えばある「タダで出来ること以上の価値」があったとしても、純粋にユーザーの利便性や自己の満足のためにそれを無料で提供しちゃう有能な個人、ビジネスとして収益モデルができていないのに無料で提供しちゃうベンチャー、価値自体は集客のためのフックでしかなく、この価値に集まった人たちを別のビジネスに誘導するために無料で提供しちゃう大企業…こういった複数の存在が無料で提供することで、「タダで出来ること以上の価値」は「ただでできること」に変質してしまうのです。
既にコミュニケーションに関するほとんどの行為は「無料で十分にニーズを満たす」レベルに達しており、このニーズそのものを満たす「タダで出来ること以上の価値」を見つけることは難しいでしょう。
また、それを見つけたとしても後発がそれをタダにしてしまったら、課金ビジネスは成立しなくなってしまいます。


じゃあ、広告収入で賄えばいいじゃないという考え方も、もはや限界に来ています。
ユーザーのリテラシーが上がってインプレッション保証型広告は成立しませんし、アフィリエイト広告は費用対効果は良いものの広告の主目的である「今伝えたいものを一気に告知する」能力はないためそもそも広告主にとってはオプションでしかありません。近年PPC広告への注目が集まりましたがこのクリック率も凋落の一方。またサイトの評価にクリック単価が決定されるシステムに変わり、CPCの低下は進む一方。広告主にとってWeb広告の価値は徐々に下がっています。(そして広告の費用対効果が明確に確認できるWeb広告システムの特徴は、品質の低下ぶりを自ら伝えてしまっています)
広告の効果の低下は広告収入の減少という形で媒体側に直撃、「貼っておくだけで儲かる」時代は終わりつつあるのです。
しかし既に「無料でできるもの」に慣れきってしまい、抜け出すことができないのです。


「無料に慣れきってしまう」「タダでできる」というのは意識・意欲としてあまりにも強すぎます。
ネットでは毎日3円ずつ手に入れるためにポイントサイトへのアクセスを怠らない人がいて、100円で解決できる問題を1時間をかけてネットで調べ出そうとする人がいる。
しかし、商売というものは本人がやったら手間がかかってしまうことを代行するという側面があります。例えば昔なら全て自宅で焼かなければならなかったパンを、代わりに作って売るパン屋のように。
上記のように経営者層の有料サービス利用率が高いという数値は、単純にWebの技術の問題ではなく手間とお金のコスト見合いで有料サービスを選んだ可能性が考えられます。そしてWebリテラシーが高いとされるユーザーのうち少なくない割合が「無料のWebが絶対万能」「PCという万能装置を使ってできることなら時間がかかっても自分でやるべき」であるという感覚にとらわれいるのではないか…と危惧しています。

決済システムの難しさ

無料サイトと有料サイトの違いは死ぬほど当たり前ですが「お金を払わなければならないこと」。
有料サイトには「お金を払う仕組み」というのが必要となりますが、なかなか「誰でも」「気軽に」「手間なく」使える仕組みが作れないのが有料サイトが難しいポイントの1つです。
決済システムに関する話は全部書こうとすると異様に長くなるので問題点をまとめます。


 ・クレジットカードは非常に便利だが、学生など属性によっては所有できない場合がある
 ・WebMoneyなどのWeb通貨は比較的入手が容易だが、決済手数料が高く本当の少額決済には向かない。加えて規格が統一されて折らず、どれも決済方法とするだけのシェアがない
 ・銀行振込は前払いの場合運営側が確認を取らなければならず、後払いの場合残高不足での未払いが異様に多い
 ・はてなポイントやOsaipoなどポイントを購入してサービスの利用に充てる方法はサービス単体として見た場合、経営上のいくつかの問題を除けばかなり答えに近いが、そのサービス範囲内でしか使えないポイントに余剰が発生することはかなり嫌われ、決済方法として好まれない傾向にある
 ・プロバイダ決済や、統一決済のサービスは既にいくつものサービスが存在するが、いずれもシェアが低く決済方法として採用しにくい。またこれらは仲介業のようなもので、上記よりもさらに手数料がかかってしまう
 ・複数の決済方法を利用可能とすることは問題解決につながりそうだが、決済システムの装備というのは開発の中で最も負荷の高い要素で、シェアの低い決済方法の装備は確実な赤字を招く


このあたりWeb業界だけで解決できる問題ではないため、なかなか改善の目処が立っていないというのが実情です。
前職ではいくつかの改善策を考え始めたものの、実現可能かを検証する前にタイムアウトとなってしまったので、以後も考え続けたいテーマでありますが。

現在と今後

現在、コミュニティサイトやオンラインゲームではアバター販売やサービス自体は無料でアイテムに課金するシステムが多く採られています。しかしこれらはあくまでおまけ・付属要素であり、サービスそのものに対して「タダであること以上の価値」が発生しているわけではないのです。
遠くない今後、今よりもさらに無料サイトのビジネスは厳しくなります。そのときに大量のネットユーザーがしぶしぶと有料サイトを使い始めるのでしょうか、「ネットの面白さは失われてしまった」と去っていくのでしょうか。
後者とならないよう、僕らWeb屋は価値観の矯正を進めていかなければなりません。


そして、普段有料サービスを使わないヘビーユーザーの方々にこれだけはわかってほしいのです。


広告をクリックしろとは言わん。興味のないクリックはしなくていい。有料サービスに入れとも言わない。好きなだけ利用してくれていい。計画なしに無料サービスを乱発し、資金難にあえぐ会社があったとしても、それはその会社の責任だ。

でも「Adblockする」とかマジでやめろボケ。

Webが金儲けに腐心して、面白くない時代が来たとしても。無料の時代が終わってしまったとしても。
その責任をユーザーに転嫁することはないだろう。サービスを提供し続けてきた企業たちの責任だ。有能な個人の作品を超える価値を提供できなかった企業の責任だ。お財布を出すだけの価値を提供できなかった責任だ。
でもAdblockしたユーザーが「つまらなくなったな」と嘆くことは許されない。それは絶対に。