地方のローカル情報サイトが少ない理由
地方でネットの利用が進んでいない話 - 北の大地から送る物欲日記
地方でネットの利用が進んでいない話(2) - 北の大地から送る物欲日記
前にいた会社で「日本全国を対象としたクーポンサイト」の運営を担当したものの、様々な試行錯誤の結果、おおいにぽしゃらせてしまったりした経験があったりするので、ぜひぜひ絡みたい。絡んでいきたい。
「地方のローカル情報サイトが少ない理由」を、取り急ぎ書き殴ります。
情報の格差はインフラの普及では埋められない
都市部と地方では相当情報の格差が発生していることは事実ですが、その原因をブコメや地方でネットの利用が進んでいない話(2)で言及されている「インフラの未整備」「ネットに対する意識」に求められるかというとちょっと違います。
実際インフラの未整備やネットに対する意識の不十分も(別エントリを立てていいほど)あるのですが、インフラが整備されている都市部では全員の意識が高いかというと疑問です。
むしろ問題となるのは都市部と地方ではそもそも求められる情報の性質が異なること。
都市部では生活する中で膨大な情報に囲まれています。たとえば美容室に行こうと思っても歩ける範囲にやたらとたくさん選択肢があったり、そのサービスや価格もバラバラ。さらに数ヶ月もすれば新しい店舗ができ、あるいは閉店したりしてどんどん情報が入れ替わる。イベントも大小数え切れないほど開催されていてとても全ての情報を生活の中で調べきれるものじゃない。
対して地方では行動半径内にある店舗数は少なく、そもそも選べる環境にないことも多くあります。都市部と比べれば出店閉店のペースも圧倒的にゆるやか。イベントも少ないので普通に生活していると勝手に情報が入ってくる。
こういう状況であれば生活の中でおよそ店舗やサービス・イベントに関する情報は得られてしまうと言っていいでしょう。付近にどんな店があるか、どんなイベントがあるかは調べるまでもない。
都市部ではローカル情報の発見と比較に対する需要が高く、地方ではこれらの情報は必要がないことがわかります。じゃあ何を求めるかというと、店舗やイベントのより詳細な情報、今何をやっているのかといった近々の告知など、深い情報が求められると言えます。
都市部と地方でビジネスが違う、という優れた分析が「近江商人JINBLOG」の上原さんのブログに書かれていたので、是非参考にしたいですね。
都心と地方は当然違う|近江商人JINBLOG
ローカル情報に対する全体の需要は高いが、個々のローカル情報自体の需要は低い
ローカル情報サイトが流行らない根本的な理由がこれ。
ターゲットとなるエリアの住人が1万人だった場合、この1万人全員が毎日このサイトを閲覧したとしても月間30万ビジターのサイトにしかなりません。
100万PVのブログを運営しても運営者が食べていけるだけの収益が得られないというのに、ローカルサイトが運営していけましょうか?
観光者など外部の人間からのアクセスを集めればいい?無理です。外の人間をあてにする地域活性化なんてパイの食い合いで、限られたユーザーを取り合うだけだし、そもそもそのエリアに強烈な魅力がないと難しい。(強力な魅力のある場所はローカル情報サイトがそれなりに成立しているので例外視します)
個々の地域ごとにサイトを作るとターゲットが狭くなってしまうなら地域ごとのコミュニティサイトを開けば万事解決…するかというとこれも難しい。地域ごとにユーザーを分配すると、個々の情報は少なくなってしまい、安定して運用できるだけの規模を確保することは至難の業。さらに既に十分な数のコミュニティが存在して(特にmixi・モバゲー・まちBBS)、そこで個人の欲求は十分に解消されてしまっているという状況です。
このタイプの専門サイトとしてはYahoo!地域情報、CityDo!他が頑張っていますが、競合が多くてユーザーが分散している結果どこもまだまだ残念な状況にあります。
個人の情報発信を含めた「地方でのネット利用が進まない理由」としてはこの辺までが理由になるかと思います。
ターゲティングが難しい
上記のような地域情報総合サイトや個々のローカル情報サイトで地方を扱う際に難しいのが地域の範囲設定。地方の範囲を設定するのがやたらと難しいのがサービス提供を行う上での壁になってきます。
都市部であれば駅を中心とした範囲設定をすればそれで住むのですが、地方は車文化であるためエリアの中心点の設定が難しいんです。さらに行動半径が都市部と比べてやたらと広いので居住地とサービスやイベントの利用エリアが異なってしまうことも多くなります。
さらに前述の通り、行動半径内に存在する店舗やサービスの情報は生活の中で十分に得られてしまうために、そもそも在住者向けの情報配信の需要が少ないというところも問題になってきます。
最近のWebの仕組み上、地方発のローカル情報サイトは不利
で、さらに地方企業発のローカル情報サイトにとって、最近のWebの流れは逆風であるなと感じます。
辛いポイントは2つ、検索エンジンの変化と広告ビジネスの変化。
上記でローカル検索サイトはそもそも厳しいと言いましたが、2003年くらいまでは地方発のローカル情報サイトは結構多く運営されていたんです(ただし黎明期からこっち、地域情報を調べるなら個人サイトの方が有力ではありました)。
これが可能だったのはまずディレクトリ型検索エンジンが主流だったため。ディレクトリ検索エンジンは表示の優先度が地方公式ローカル情報サイトにとって都合が良かったのです。
地方公式のローカル情報サイトであれば、個人サイトや内容の薄い総合情報サイト、その地域にある個々の店舗サイトよりも高い位置に表示される。このため地方情報をほしがるユーザーがローカル情報サイトにたどり着くことができていました。
が、時代は流れ検索エンジンはロボット型が制圧。情報の密度が高くSEOに最適な個人ブログ、ページ数が多くやはり上位表示されてしまう総合情報サイトに表示を独占され、規模的にも予算的にも情報に限りのあるローカル情報サイトが閲覧されにくい状況が生まれています。ロボット型であっても公式サイトは優先されているはずですが、地域情報サイトが優先されるケースは少なく、情報を提供しても読んでくれない状態に陥りました。
そして運営を続けるためになる費用面。かつてはバナー広告を地域のクライアントと直接契約できていましたが、広告ビジネスの進化に伴い直接的な成果が重視されるようになると、直接契約を行うクライアントは激減、アフィリエイトやPPC広告に逃げていくわけで。
かくしてアクセスも稼げず、アクセスが稼げないために広告費も稼げない「ローカル情報サイト」のビジネスモデルができあがり。
儲からないけど情報発信したいなら個人サイトに頼らなきゃならない。
全国規模の地域情報サイトは前述の理由でイマイチ伸びない。
地域発地域向けの情報サイトを企業として運営するには厳しすぎる状況です。
という感じで勢いだけで書き殴りました。後悔確実なので後で詳しく掘り下げてみたい。